遙かなるソウル、砂の1800mに「師」を追う
韓国のソウルにある、ソウル競馬場。
韓国・ソウルの中心部から地下鉄4号線に揺られ、「競馬公園」駅。
出口を抜けると、そこにはかつて私が3年間を過ごした街の記憶と、新たな「勝負」の熱気が混在していました。
一昨年、仕事の合間を縫って訪れたソウル競馬場。
20年前、ダビスタやウイニングポストに耽溺しながらも馬券には至らなかった私が、いま再びこの地に立ったのは、ある種の必然だったのかもしれません。
異国の砂、大井に通ずる静寂と熱
ソウル競馬場は、一周1800mのダート専用コースを擁しています。
規模感としては大井競馬場に近いでしょうか。
施設の洗練度こそ大井に譲りますが、駅を降りてすぐに予想紙を掲げる「おばちゃん」たちの姿は、万国共通の競馬場の風景であり、妙な安心感を覚えます。

私が手にしたのは「ソウル競馬ライブ」と銘打たれた専門誌。
挟み込まれた手書きのメモは、日本でいう「勝馬」の付録のようなものでしょうか。
狙い目の馬番を記したその素朴な紙片を握りしめ、まずはコースを視察しました。


特筆すべきは、ウィナーズサークルが堂々たる舞台として設えられている点です。
勝利の栄光を視覚化するその構造は、日本の競馬場も見習うべき演出だと感じました。
デポジットが繋ぐ、異国の「UMA-RISE」
韓国の馬券購入システムは、現代の日本における「UMACA」に近いスタイルです。

まず現金でデポジットを行い、チャージした金額から投票する。
私は迷わず40,000ウォンをチャージし、再び専門誌へと目を落としました。

紙面には「1300m 近走記録」の文字。
上がりタイムや走破時計が並びますが、血統背景も展開のクセも読めない異国の地で、私が頼れる指標はただ一つ。
「調教師(トレーナー)の成績」です。
これは私のデータ管理における根幹でもあります。
馬の能力を100としたとき、それを発揮させる厩舎の技量こそが、最も裏切らない数字となる。
リーディング上位の調教師が送り出す、配当妙味のある穴馬——。

狙い澄ました穴馬のワイドは惜しくも外れましたが、その後、リーディング上位厩舎の伏兵を狙った複勝で見事に勝利を収めました。
まさに、数字の裏付けが異国の地でも通用した瞬間です。
レベルを超えた、その先の「体験」
3階建てのスタンドは冷房が効き、快適な椅子に座ってレースを観戦できます。
しかし、ひとたびゲートが開けば、静寂は怒号に変わります。
韓国語の響きに馴染みがない方には少し刺激が強いかもしれませんが、それは競馬が人々の生活の一部であることの証左でもあります。
正直に申し上げれば、レースレベルは高くありません。
コリアカップでの日本馬との実力差を見れば分かる通り、平場のレベルは日本の地方競馬を下回るかもしれません。
しかし、競馬の価値はタイムやグレードだけでは測れないものです。
ソウルの風に吹かれ、異国の砂を見つめながら、己の解析理論を試す。
旅行のついでに1レースだけ、そんな贅沢な時間の使い方も、大人の競馬の嗜みではないでしょうか。